糸の無い糸電話で意図も無く

自転車をいじり続けて苦労し続ける者の記録的なサムシング。

verge N8のフロントダブル化で苦労したでござるの巻

自転車をいじる上で、多分大方の人が苦しめられるのが共通化されていない独自規格の部分にいかに共通規格のパーツを載せるかだと思う。

 

さて、自分の愛車はtern verge N8。

当初はフロントギアを大きくして(52t→58t)フロントシングルxリア10速ワイドギア(11-36t)で乗っていたのだが、旅行先に連れて行って峠道を登った際にまあ苦しい思いをしたのでフロントの二枚化を検討したのが事の発端となる。

 

  1. FDを駆動させるためのワイヤーのガイド

  2. FDの取り付け

  

この二点はお互いに作用し合う要素で、かつ苦労したポイントなので、この辺りについて話していこと思う。

 

 

 

1)FDを駆動させるためのワイヤーガイド

ternの車種は3種に別れる

  • 最初からフロント多段車
  • デフォルトがシングルだがFD台座付き
  • フロントシングル車(台座無し)

 

内、前二者にはFD(直付けタイプ)を取り付ける為の台座と、FD用のアウターケーブル受け、インナーワイヤーのガイドを取り付ける雌ネジがそれぞれシートチューブに設けられている。

これらが無い後者に関しては、バンドを介してFDを取り付けるのだが、これもまた茨の道であることを先に記しておく。

 

N8は「シングルだがFD台座付き」

多段化の為の設備は揃っている。

インナーワイヤーのガイドになるオプションパーツを取り付ける事で可能。

純正パーツを取り寄せるのは時間がかかるのでヤフオクで出ているもので済ます事に。

DAHON インナー プーリー」*1とかで検索すればサクッと出てくる。

(インナーケーブルガイドプーリーってのが正式名らしいですね。)

  

取付け時に一騒動あったため、写真は残念ながら無いが、このパーツの構造としてはインナーワイヤーを這わす樹脂製の滑車の中央にアルミ製のブッシュが入っている。

RDのプーリーを想像してもらうと分かり易いだろう。あんな感じ。

これを介して*2FDにワイヤーを這わせる。

こいつを、シートチューブのBB付近にある雌ネジに取り付ける。

 

BBを投げ捨てよう

さて、コイツを取り付ける際に一度クランクを外す必要があるが、その時ついでに購入時に入っているカートリッジBBを外して投げ捨てよう。

 結論から言うと、このBBの軸長(103mm)では先ほどのプーリーの取り付けボルトとチェーンリングが干渉する。しかもガッツリ。

 更に言えばFDの可動幅とも全く合わない。

まあ、自分は先んじてクランク・BB共に既に変えていたクチなので、この軸長でそもそも付くとは思っていないが、元々付いているクランクにチェーンリングだけ付けて2速化…と考えている方は、vergeのフロント多段化には軸長の長いBBが必要になる事も覚えておいてほしい。

 

既に付けていたクランクは10s対応の105クランク(fc-5700/2s)。

 

こちらの軸長は110mm。

これでも干渉する!!マジか!?

チェーンリングには当たらないが、ボルトの頭がチェーンリング固定ボルトに当たる*3…。

プーリー部分の厚みが7mm程度。そこからブッシュの頭が2〜3mm出ている+ビスの頭も2〜3mm程度。

ブッシュの頭は、ビスと滑車部分が接触して締め付けて稼働しなくなるのを防ぐ為に付いてるものなので、最終的にブッシュの長さ>プーリー厚みなら動作上全く問題は無い。

ここを削り落としてやると良さげなので、いざ実行。

f:id:sugie9:20170423122551j:plain

いやあ、それでもリングボルトとギリギリですね。0.1mmあるかないか。

 

-----ここからは唯の余談-----

我が家では専ら自転車作業はベランダで行っている。

この件のブッシュ、削っている作業中に手元から転げ落ち、下水管に直通の排水用の溝に見事にインしてしまった…

途方に暮れるも、待てよ…M5ビスの通るアルミブッシュ…思い当たる物がある。

感の良い方はお気づきだろう。そう、RDのプーリーに入っているアレだ。

f:id:sugie9:20170423115322j:plain

こいつを一か八かで当ててみる。…ぴったりである。

が、少しワイヤープーリーの厚みより長さがある。実測10mm。

遊び分とビスが直接滑車部分に接地しないようにする余剰分を加味しても2mm程度削る必要がある。

どちらにせよ削る必要はあるが、これは覚えておいてほしい。RDプーリーのブッシュで代用可能である。むしろ形状的にこっちを加工する方が結果的に楽。

 -----ここまで余談-----

 

ということで、軸長110mmまでのBBやクランクではケーブルガイドプーリーはまず干渉することになる。

それを避ける為には

  • スクエアテーパーやオクタリンクのBBなら113mm以上のものを選ぶ
  • 2ピースクランクだとそうも言ってられないので、何がしかの加工が必要になる。
  • 超低頭ボルトを使う

    →それでも余分なブッシュ頭はあるので、多分良くてツライチ。まだ干渉しそうな気がする。

  • 例えばブッシュ削るとか、BB-フレーム間にスペーサー嚙ますとか

  →とはいえ、1mm以上のスペーサー嚙ますのは現実的ではない。

    2.5mmとか使ったら今度は左クランク取り付けるための軸長が危なくなる。

  →FDの項での解決策とも被るが、MTBコンポのクランク+BBやロード3sクランクといった、物理的にチェーンリングがより外側に出るようにしたものを使うという手もある。 

 

2)FDの取り付け

クランク周りが落ち着いて、やっとFDの取り付けである。

今回選んだのはfd−5700

 

クランクと揃えて一世代前の10sの105だが、対応段数の他にもう一つ理由が有る。

それは、ワイヤーを引くアームがロングアームでないからだ。

最新世代のtiaglaまでのFDは、ワイヤーを引くテコ比の上がるロングアームになっている。より小さな力でも引けるようになりましたね。

これが、vergeシリーズでは変速で引っ張られたアームがシートステーに干渉してしまう。

それを避ける為には、SHIMANOでは一世代前のショートアームのものにする他ない。

f:id:sugie9:20170423122142j:plain

汚れに関しては目を瞑っていただくとして…

実際に付けるとシートステーがこのぐらいの近さになるので、ロングアームは絶対に無理である。

 

他の候補としてはMicroShiftのFDまたは、vergeの上位種で採用されているSRAMのものか。ただSRAMのものは、いいお値段がすることとamazonでは見かけないのが難点。

 

気を直して、取り付け。

取り付け台座に噛み合わない。

本体側は問題ないのだが、台座を挟んで反対側にあるアールのついたワッシャーが全く台座の形状と噛み合わない。*4

ワッシャーの両端のみが点で接地するような状態なので、ボルト締込みに合わせてズルズルと下に滑ってしまう。

固定自体は辛うじて出来ているようだが、角度や位置調整がままならない。出来ないこともないが全然キッチリ出来ない。っていうか大分強引な力わざ。

後述のFDアーム可動域の問題にも関係してくるのでこれは看過出来ない。

 

ので、ブッシュに引き続きワッシャーも削って整形することに。

フレーム側になる方片側の山を削り落としてしまい、形状が )→ノに近くなるように台座と何度か合わせながら調整。

f:id:sugie9:20170423130720j:plain

これで噛み合いは問題なくなって、面-面で接地するのでまともにセット出来るようになった。

この写真から分かるように、台座部分は厚みが結構ある。

厚くなる程、本体が付く台座内側のアールより外側のアールは大きくなだらかになっていく。

この辺は、バウムクーヘンを思い出せば分かりやすいだろう。

しかし、FDのワッシャーはディレイラー本体にピタリとつくアールが付けられている。

(写真右。左はこれならどうだと思って用意したfd-9000のスモールパーツ)

f:id:sugie9:20170423132011j:plain

つまり、台座内側のアールと同じ。これでは合わないのも無理がない。

と言っても、台座のことに関しては車種によるとしか言えない。厚みや作りも様々だろう。

基本、現物合わせの調整を覚悟する他ない。

 

実は、ついでに固定ボルトも長いものに変えている。

付属で付いていたM5x13.5mmからM5x18mmのものに。*5 

ワッシャーの加工をしない状態だと、台座の厚みとアールの噛み合いの関係で付属ボルトの長さではvergeにおいてはビスの掛かりが非常に浅くなる。

加工後も台座の厚みを加味して、長いものの方が安心感が高いと判断して交換した。

 

  • FDのワッシャーは台座形状に合わせて整形が必要*6
  • 取り付けボルトも長いものにした方が良い(15mm〜) 

 

これでフレームにFDが付いた。次は調整だ。

プレートのイン側がどう頑張ってもチェーンに擦る。調整ボルト目一杯緩めても擦る。

この原因はどうやらvergeのシートチューブにあるようだ。

vergeのシートチューブは41.1mmの太さがある。

他のクロスやロード・MTBなどは通常28.6mm/31.8mm/34.9mmなどが一般的なサイズになっている。

つまり、半径で言えば34.9mmから考えても約3mmほど台座が外側に出ていることになる。(厳密に言えば、そこまでオフセットしていないのだろうが…)

それに対しBBシェル幅は通常の68mm。チェーンリングの位置は他のものと変わらない。

なのでプレートを限界まで内に入れてもチェーンに干渉してしまうのだろう。

こればかりはどうしようもない…わけではなく。対処法はいくつかある。

 

  • 2ピースクランクでなければ軸長の長いBBに変える→113mm以上
  • 2ピースクランクであれば

    トリプル用のクランクを使用してアウター/ミドルで二枚にする

   →インナー分オフセットしているのでダブル用より外に出る。

    つまりインデックスイン側最端も外に出せる。

   (調整ボルトを締めて外側に寄せる=イン側幅の調整が効く状態となる)

  • いっそMTBコンポのクランクにする。

    →BBがスペーサーを使ったシェル幅68mm-73mmのコンパチ仕様なので、こちらもチェーンリングがその分外側に出ている。

    →チェーンリングのPCDや最大歯数、固定アーム数が変わってしまうので、その事で困らなければ…な手段。

 

つまり、現状ではこれ以上内側に調整がきかない状態を、外側に出して最端を調整できる状態に持って行く方法だ。

 

これに関しては、台座のボルト穴のフレーム側を微量削って広げて対処した。

とはいえ、ツライチくらいにしかならないが、やらないよかマシになった感じ。

やりすぎると台座部分の強度に関わってくる方法なので全然正攻法じゃ無いです。

もしやる方は自己責任でやりすぎない範囲内に。

 

ちなみに、自分はフリクション式のサムシフターを使用しているのでその後の調整自体は細かい事をすっ飛ばして楽をしている。(稼働する範囲内なら自由な位置にできるので)

 STI使いたいとかインデックスのシフターが使いたいなんて人は、セッティングでももう一手間ということを覚えておいてほしい。

 

さて、ここで丁度いいので最初にバンドを介してFDを付けるのもまた茨の道と言ったことに触れておこう。

先ほども出てきたようにvergeのシートチューブは41.1mm。このサイズのFD取り付けバンドは残念ながら無い

各種DAHON用やBD−1用の物なども売られているが、こちらは40mm。

  • 無理やり付ける*7

  • ビスを長いものに取り替えて多少無理やり付ける
  • 内径を削る

など、やはり何がしかの加工的な手を打つ他無い。

 

と、ここまで長々と書いてしまったように、フロントダブル化のための土台があっても、そう簡単に事は運ばない。むしろ苦労する。苦労した!

なんなら最初からダブルの車種を購入するか店に丸投げする方が賢いだろう。

重ね重ね言うが、基本現物合わせである。

物に合わせて問題点を微調整していくことになる。なので、それなりに経験則と知識(こちらは足りなければネットという集合知があるがケースバイケースすぎる)が必要になる。

自転車始めて何週間とかだったら、自分も泣いて投げ出し途方に暮れてただろう。

それを踏まえても、やはり多くのカスタムを手がける専門店に無理せずお任せするのが一番の近道だと思う。*8

 

この記事が自分でやりたい方の助けになったなら幸いだ。

むしろ自分が欲しかった。

 

■フロント2枚化まとめ

クランク軸長は113mm以上がマスト。

 110mmでやっとだが、後工程で要加工箇所が出る

 それ以下は無理と思え

FDのワッシャーは加工の必要あり。

 台座の形に合わせろ

 取り付けボルトも長いものに変えると良い

 (どちらもマストじゃないけど調整の妨げになるよ)

軸長によってはイン側でプレートが擦るのを避けられない。

 ここでもやはり目安は113mm

 

*1:ここはDAHON車と構造が一緒なので互換性とか気にしなくていい。ボルトサイズも変わらない。

*2:他の車種であればBB下に付けるコレみたいなのの代わりになるパーツ。

*3:がっつり当たるのが5アームの内一点だけだったので、固定時の締め付けバランスが悪かった可能性もあるが、そのような誤差とはいえ干渉するのは気持ちが悪い。

*4:ワッシャー側のアールの方が小さい

*5:ボトルケージやキャリア固定用のものを流用するだけ。ホムセンでM5ボルトの20mmとかの長いの買ってもいい。

*6:ただし、気にしないぜって場合はその限りではない。フレーム側の個体差というのも考えられるが、正直あの形状の差は誤差とかいうレベルじゃない。

*7:25.4mmクランプのステムに26mmのハンドルがなんとか付いたみたいな差ではないのでオススメはしない。

*8:ここで言う「専門店」はternやdahonのカスタムに強い店のこと。通常のスポーツバイク専門店やプロショップ、あさひなどの量販店では間違いなく扱ってはくれないか、パーツ単位での個別合わせの細かいチューンまではしてくれないだろう。